校正の現場で使われる言葉について、皆さんはどれぐらいご存じですか?
時代の流れや現場の特色、地域などによって使う言葉や知っている言葉は異なります。
コラム第4回目は、弊社でよく使われる言葉、お客様とのやりとりの中でよく使われる言葉について、前後編で解説していきます。
校正にまつわる言葉 前編:すれ違いやすい用語
前編では、校正会社の先輩と新人との会話エピソード形式で、すれ違いやすい用語をひとつご紹介します。
書籍校正案件の打ち合わせ、同席してみてどうでしたか?
流れは掴めてきました。でも、専門用語にはまだ慣れませんね…
例えば、校正するデータのことをカンプとかゲラとか言いますが、同じ意味なんでしょうか?
カンプとゲラを同じように使う場合も増えましたが、元々の意味は別のもので、使い分ける現場もあります
Point1.「カンプ」と「ゲラ」の違いってなに?
簡単に言えばカンプはデザイン確認に使うもの、ゲラは校正紙のことです
💡カンプとゲラの意味
「カンプ」は文章や画の配置・デザインなどを全体的に確認するためのもの デザインを練り込む前の完成イメージ確認用のものを「デザインカンプ」、 校了した確認用出力紙を「最終カンプ」などと呼ぶこともある 「ゲラ」は校正作業のため、完成品に近い印刷データを実際に印刷したもの 色味の確認や一字一句の確認をするための校正紙
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出版までの流れで二つの言葉の違いを見てみましょうか
💡出版までの流れにおける「カンプ」と「ゲラ」
- 編集者の指示をもとにデザイナーが「カンプ」データを作る
・この時点では原稿や画像はダミーであることも多い ・「デザインカンプ」と呼ぶこともある
- 編集者が「カンプ」を見て全体のレイアウトやデザインを確認する
・修正や追加指示を入れ、何度か1〜2を繰り返す
- 印刷データが完成
・この時点で原稿など本番用のものが入っている
- 印刷データを出力=「ゲラ」刷り をする
- 校正者が「ゲラ」を見て校正する
・修正や追加指示を入れ、何度か4〜5を繰り返す
- 校了。印刷にまわす
・校了紙のことを「最終カンプ」と呼ぶ場合もある
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ざっくり確認用がカンプで、本格的な校正用に使うのがゲラなんですね
版元さんや印刷会社さんが出力して送ってくれることも、うちのプリンターで印刷することもありますし、色々ですね
💡 校正紙出力(ゲラ刷り)は誰がやる?
校正の目的や段階により、出版・編集社が印刷する場合も印刷会社が行う場合もある
印刷会社が本番と同じ機械や紙で印刷する場合を本機校正と呼び、 それ以外の環境、たとえば校正会社のプリンター等で印刷する場合は簡易校正と言う
色校正など最終確認をする場合は、本機校正のほうが確実な方法
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Point2.「カンプ」と「ゲラ」が校正現場で同じように使われるのはなぜ?
あれ? でも、この間はほぼ完成品のPDFを印刷せずに、直接赤字を入れて戻しましたけど……
はい。最近では、色校正の段階までは完成品に近い印刷用PDFを閲覧ソフト上などで直接一字一句校正する、印刷しない校正のパターンも増えています
その場合は印刷用PDFをそのままゲラと呼ぶことがあります
クライアントから届いた製作途中のカンプデータをプリンターで印刷してチェックすることも多いですよ
今の校正の現場では、カンプとゲラの境目は曖昧になってきている場合も多いんです
だからカンプとゲラを同じように使うことがあるんですね
校正会社・版元・印刷会社など現場によって使い分ける・分けないも意味合いも違っているので、クライアント側での使い方に合わせましょう
はい! どちらも馴染みないカタカナなので、あべこべに覚えないようにしないと…
ゲラもカンプも語源を知ると元々の意味を忘れにくいですよ
💡 カンプとゲラの語源
カンプ:英語のカンプリヘンシブ・レイアウト=Comprehensive Layout(包括的なレイアウト)
ゲラ:活版印刷の頃に使われていた、活字を収納する木箱にちなんだ呼び方。英語のガレー船に箱の形が似ているとして、galleyが訛ってゲラと呼ばれていたそう
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…ところで、意味のピンと来てない言葉がまだいくつかあるんですけど…
じゃあ私が新人の時にまとめたメモを特別に見せちゃいましょう!
(後編 校正現場でよく聞く言葉 へ続く)