校正の現場で使われる言葉について、皆さんはどれぐらい知っていますか?
時代の流れや現場の特色、地域などによって使う言葉や知っている言葉は異なります。
前編では、校正会社の先輩と新人との会話形式で、すれ違いやすい用語についてのエピソードをご紹介しました。今回はリストとして一挙に用語の意味をご紹介します。
後編 校正現場でよく聞く言葉〜バンズ編〜
●校正用語
- ゲラ
印刷物の試し刷りのことを言います。校正現場においては「校正紙」とも呼び、ゲラと元原稿を照合して間違いを見つけます。
- カンプ
校正の現場、印刷の現場、デザインの現場などで使われ方の異なる言葉なので注意が必要。
印刷物の仕上がり見本のこと。校正の現場では、校了になったものを「最終カンプ」と呼びます。
- 元原稿
誌面を作成するにあたって使用した文面などを指す。テキストファイルやWordやExcel等のデータであることが多いです。
- 赤字
主に赤色のペンや注釈で入れた、修正必須の指摘のこと。または、校正指示入りのゲラやPDF全体を指して言います。
- 黒字・疑問
主に黒や青など、赤色以外のペンや注釈で入れた指摘のこと。必ず修正すべきではないが直したほうがいいのでは?と校正者が判断した場合や、間違いかどうかが不確実な場合など、確認を促すために入れる指摘を言います。
- 赤入れ・疑問出し
それぞれ赤字や疑問の校正指摘を書き込むことを言います。
- 赤字消し
単に赤消しとも。赤字原稿と最新のゲラを見比べながら、赤字が正しく反映されているかどうかを確認していく作業です。
- 突き合わせ
資料や前版などと校正紙を見比べて、一字一句を確認していく作業を言います。引き合わせと言うことも。
- アオリ
突き合わせを行う際、校正対象の用紙と原稿・前版などの用紙の2枚を重ねて、上の紙をパタパタとめくりながら確認していく手法。弊社ではパタパタとも言います。データ上で行う場合は2つのデータを切り替えて交互に表示させてチェックします。デジタルで行う場合はプルーフ、照合とも。
- 初校・再校
初校は最初の校正紙を指し、初校の赤字を直したものを再校(二校)と呼びます。その次は三校・四校…と続きますが、三校までが一般的とされています。
- 念校
責了になるような場合に、念のためする校正のこと。修正のあった一部分だけを見ることも多いです。
- 校了
全ての校正が終了し、印刷に入れる(公開可能な)状態になったことを言います。
- 責了
最後に残った赤字の数が少ない時などに、校正者の最終確認を経ずに編集・修正者・印刷所などの責任で校了とすること。
●デジタル環境での校正用語
- デジ検
デジタル検版の略。検版ソフトなどを使用して、デジタル環境でデータの照合を行うこと、またその結果。
- PDF(ピーディーエフ)
Portable Document Format 。文書やデザインなどが、印刷や閲覧に適した形として保存された形式。
- PDF/X(ピーディーエフ エックス)
印刷用PDFとして最適化された、相互互換性のある形式です。国際標準規格ISOで規定されたもので、受け渡しや印刷の際、トラブルになりやすい要素が排除されています。Portable Document Format eXchangeの略で、「PDF/X-1a」「PDF/X-3」「PDF/X-4」などがあります。
- Adobe Acrobat(アドビ アクロバット)
PDFを閲覧・編集するための最も一般的なソフトウェア。Adobe社が提供しており、機能の制限された無料版と、全ての機能がフルで使えるPro版があります。
- アウトライン化
デザイン用語においてはもう少し広い意味がありますが、校正現場においては、「文字を図形にする」という意味で使われます。
アウトライン化された文字は、フォント(文字の形の情報)が無い環境でも問題なく印刷することができる、という利点があります。そのため、データ受け渡しの際にはよくアウトライン化された状態で受け取る場合が多いのですが、「図形化されているため、コピーや編集や検索ができない」という部分がPDF注釈校正においては落とし穴になります。
お客様には、「文字情報のある、アウトライン化されていないPDFをお願いします」とお願いしています。
- クラウド
Drop box、Box、Google Driveなど、ログインすればどこからでもアクセスでき、相互に編集ができるウェブ上のデータストレージ(倉庫)サービスのこと。
- 社内クラウド
大手各社などが自社専用に展開しているクラウドサービスを指します。
●デザイン・出版・印刷にまつわる言葉
- デザインカンプ
デザインの完成見本の意味で、クライアントへの提案やプロジェクトメンバーとのイメージ共有などに使用されます。単にカンプと呼ぶ場合もあります。
- フォント
明朝体やゴシック体など、文字の形の種類を言います。媒体や用途により使い分けられます。フォントにより文字の形の違いが大きかったり、一部の文字が使えず文字化けを起こすこともあるので注意が必要です。
- ph
写真(photo)。誌面上で、挿画などに使われている画像のことです。
- 解像度
画像のきめの細かさをいいます。印刷に必要な解像度に足りていないと、画像の内容が不鮮明になったり、汚く見える原因になります。
- 初稿
最初の原稿のこと。
- 入稿
出版社などが印刷会社へ原稿を渡すこと。また、出版社が著者から原稿を入手すること。弊社では主に前者の意味で使っており、原稿を受け取った際は「原稿拝受」などの言い方をしています。ちなみに出稿は新聞や雑誌などに広告を出すことで特に対応した意味ではないことに注意。
- 下版
校了後にデータを印刷工程へまわすこと。
おわりに
言葉の意味は日々移り変わっていくものですし、新しく使われるようになる言葉もあります。
現場により、ここに書いた意味とは違う意味で使われる場合もあります。
相手の使っている言葉が自分の把握している意味と決めうちせずに、食い違いが起きないように認識をすり合わせることが大事かもしれません。